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「書痴の幸福なる死」余談 其の二

其の一

 SF Prologue Wave掲載の短篇「書痴の幸福なる死」は、導入部、本論、終結部から構成され、導入部に「〇」(ゼロ)、二部に分かれている本論に「一」「二」、終結部に「x」(エックス)の数字および記号が振られています。
 導入部が「〇」なのはともかく、終結部が「x」なのは、このパートの内容が資料に基づいたものではなく、「私」(エッセイ「書痴の幸福なる死」の「著者」。小説「書痴の幸福なる死」の著者である仁木稔ではない)の「想像」だからです。だからほんとは「虚数を表す記号」を使いたかったんですけどね……それだと「i」になってまうから……読者には伝わらんだろうから……(数学畑の人でも、咄嗟に虚数のことだとは思わんでしょう)
 だからまだ解り易いだろうと「x」にしたわけですが、こういうこだわり方(素直に1、2、3、4としない)は、我ながら感性が中二だと思いました。もう50過ぎてんですけどねー。でもやる。

 さて、前回の記事で、本作には一つだけ嘘(フィクション)が混ぜてあると述べましたが、作中で想像や推測として書かれている事柄は、それには該当しません。「事実」(資料に基づく)として書かれている事柄の一つです。
 で、それがどれなのかは、ネタバレになるので解説しません。ま、興味のある人はいないでしょう。このブログで自作の解説をするのは、私自身のための覚書も兼ねているので、そちらの必要性もないし。

 そういうわけで書物や読書の歴史、本作の「主人公」であるジャーヒズ、アッバース朝の文化や政治等に興味のある方は、以下のテキストをどうぞ。本作の主な参考文献です。

書籍(タイトル:『』は書籍名、「」は収録論文等のタイトル 著者名 出版社名)
『図書館の誕生 古代オリエントからローマへ』L.カッソン 刀水書房
『声の文化と文字の文化』W.J.オング 藤原書店
『ギルガメシュ叙事詩』月本昭男・訳 岩波書店
『紙の世界史 PAPER 歴史に突き動かされた技術』(第一章および第三章のみ参照)マーク・ランカスキー 徳間書店
『紙と羊皮紙・写本の社会史』(Ⅱ章およびⅣ章のみ参照)箕輪成男 出版ニュース社

『書物の文化史 メディアの変遷と知の枠組み』(第一章「東洋の書物史」のみ参照)加藤好郎ほか 丸善出版
『中国出版文化史 書物世界史と知の風景』(第四~六章のみ参照)井上進 名古屋大学出版会

『イスラーム 書物の歴史』小林泰/林佳世子・編 名古屋大学出版会
『ギリシア思想とアラビア文化 初期アッバース朝の翻訳文化』D.グダス 勁草書房
『イスラーム社会の知の伝達』湯川武 山川出版社
『イスラーム全史』(第2章のみ参照)余部福三 勁草書房
『イスラームの国家と王権』(第2章のみ参照)佐藤次高 岩波書店
『聖なる学問、俗なる人生 中世のイスラーム学者』(第2章「学問修得の方法」のみ参照)谷口淳一 山川出版社
『イスラームの生活と技術』(第2章「知識と技術の伝達 紙を中心に」のみ参照)佐藤次高 山川出版
「製紙法の西伝」(『シルクロードの文化交流 その虚像と実像』所収)藤本勝次 同朋舎
「住宅と住宅地」(『イスラーム世界の都市空間』所収)陣内秀信 法政大学出版局
『アレクサンドロス変相 古代から中世イスラームへ』(第3章「イスラーム以前のイランにおけるアレクサンドロス」のみ参照)山中由里子 名古屋大学出版会
『ペルシア語の話』(Ⅲ、Ⅳ章のみ参照)黒柳恒男 大学書林
『中世思想原典集成Ⅱ イスラーム哲学』(竹下正孝「総序」のみ参照)上智大学中世思想研究所・編訳 平凡社
『イスラームの人間観・世界観 宗教思想の深淵へ』(第二、三章のみ参照)和子 筑波大学出版会
『イスラームの世界観 ガザーリーとラーズィー』(序章、第一章、第五章のみ参照)青柳かおる 明石書店
『イスラームから見た世界史』(第七章のみ参照)タミム・アンサーリー 紀伊国屋書店
『宗教の世界史11 イスラームの歴史1 イスラームの創始と展開』(第3章 堀井聡江「生活の指針シャリーア」のみ参照)佐藤次高・編 山川出版社
『アラビア科学史序説』(「付録Ⅳ アル・ジャーヒズの『動物の書』について イスラムのアダブの書の典型」のみ参照)矢島裕利 岩波書店
「けちんぼども」(『世界文学大系68 アラビア・ペルシア集』所収)ジャーヒズ 筑摩書房

雑誌論文
「ジャーヒズとアラブ修辞学の形成過程」濱田聖子(『日本中東学会年報』14)
「ジャーヒズ著『けちんぼども』における逸話と登場人物 文人譚を手がかりに」濱田聖子(『日本中東学会年報』37-2)
「アダブ考 アラブ文化におけるアンソロジーの思想」岡﨑桂二(『四天王寺大学紀要』51)
「アラブ文学における論争ジャンル 「マカーマート」の周縁」岡﨑桂二(『四天王寺大学紀要』48)
「アッバース朝期のセクシュアリティと同性間性愛 ジャーヒズ著『ジャーリヤとグラームの美点の書』の分析を通じて」辻大地(『東洋学報』98-4)
「紙の伝播と使用をめぐる諸問題」清水和裕(『史淵』149)
「イスラム世界における紙の伝播と書籍業 バグダードのワッラークを中心として」後藤裕加子(『日本中東学会年報』7)
「マームーンとムウタスィムの新軍団」余部福三(『史林66-6』)

英文(Web記事)
Al-Jahiz Master of Arabic Prose
Jahiz: Dangerous Freethinker?
Al-Jahiz Bibliography
al-Fatḥ b. K̲h̲āḳān


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