聖なる鹿殺し
2017年公開。ヨルゴス・ラモンティス監督作を観るのは、『ロブスター』(2015)に続いて2作目。ネタバレ注意。
不安、不快感、緊張を高めるBGMが多用されてるのが嫌。演出や映像までそうだったら、途中で切ってる。
世界は公正ではないのに、「先生は僕の家族を一人殺したんだから、先生の家族も一人死ぬ」という「公正」がぶっこまれる、という「一点だけの超自然」がいいのに、丁寧に現実的な描写を続けてきておいて、ラストであんな高級住宅地で猟銃何発もぶっ放して通報されないとか、死体はどうしたんだとか、いきなり雑になったので興ざめ。あの結末とBGMだけなんとかしてくれれば、設定からして雑な『ロブスター』よりはずっとよかった。
合わなさそうな予感がしてたのに敢えて観たのは、『ロブスター』のコリン・ファレルがよかったから。期待を超えたヘタレで満足。やっぱりタフガイを気取らなければ、いい役者なんだ。ニコール・キッドマンは肌の弛みや筋の張りがさすがに老いを感じさせるが、角度やライティングによっては相変わらず美しい。昔より演技は巧くなったとはいえ、やっぱり『Lion』のような普通の主婦より、冷血なセレブ妻のほうが似合う。
しかし強烈だったのはマーティン役のバリー・コーガン。ダブリン出身か。うん、そういう顔してんな。92年生まれだから撮影時には24にはなってただろうけど、「子供の時は老け顔で、年取ったらかえって若く見える」顔だな。若い時のポール・ダノみたいに、毛穴から皮脂みたいに不快感が滲み出てきてるような役者だ。でも『ダンケルク』の時は朴訥な青年役で違和感なかったから、ダノと違って出し入れ可能なんだな。
エウリピデスの『アウリスのイピゲネイア』を下敷きにしてるそうだが、どの辺かわからん。「聖なる鹿」はイピゲネイアの身代わりにされた鹿(後世の加筆とされる)というよりキリストのことだろうけど、まあ犠牲にされた男の子のことなんだろうなあ。ほかの家族は3人とも身勝手だし。監督はギリシア人だが、精神的基盤に占める割合はギリシア悲劇よりギリシア正教のほうが遙かに大きいだろうしな。
まだ2作しか観てないが、私の中でこの監督はラース・フォン・トリアーと同じ枠になっている。露悪的なとことか、キャラクター(およびそのキャスト)をサディスティックに扱うとことか……単に表面的に似てるんじゃなくて、本質的にな(次作の『ロブスター』に比べると、本作は技法など表面的にはドグマ95っぽさは少なかった)。
ただしフォン・トリアー作品は『奇跡の海』『フリークス』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でもうお腹いっぱい、これ以上観なくていい、となったが(『奇跡の海』以外は観てよかったし、今後作風が変わったら観てもいいけど)、ランティモス監督作品はとりあえず『哀れなるものたち』と『女王陛下のお気に入り』は観てみたい。
『ロブスター』感想
『LION/ライオン 25年目のただいま』感想
『ダンケルク』感想(バリー・コーガンには言及していません)
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