« ゴジラ-1.0 | トップページ | ロブスター »

愛と哀しみの果て

 1985年公開。意味不明な邦題だが、原題はOut of Africa。デンマークの作家カレン・ブリクセン(1885‐1962)の『アフリカの日々』(邦訳あり。原題は映画と同じ)が原作。自伝なんだけどアイザック・ディネーセン名義で発表したから、自伝の体ではないのか(後に本名でリライトしたようだが)。

 役者の好き嫌いは多いほうかもしれない。しかし一方で、嫌いな役者がいい演技をすると、好きな役者がいい演技をした時よりも評価が高くなってしまいがちである。評価云々以前にね、なんかすごく嬉しくなるんですよ。だから嫌いな役者が「いつもと違う役」をやってると、つい期待して観てしまったりする。今のところ、勝率は半々。高いんだか低いんだか。
 メリル・ストリープもその一人で、嫌いな理由を簡潔に言うと「似合わない役ばっかりやる」「しかも演技過剰」。しかしブラック・コメディ『シー・デビル』(1989)はだいぶおもしろかったので、このジャンルなら、と『永遠に美しく…』(1992)も観てみたら、いまいちだった。ギャグを大袈裟にやりすぎておもしろくない、つまりは演技過剰。
 その後、何作か観た出演作もすべて「外れ」だったので、もはや期待ではなく、「ノイズになってなければいいや」くらいの気持ちで観たのが『プラダを着た悪魔』だが、これが『シー・デビル』を超えた嵌まり役だった。
 それはもう嬉しかったのだが、ここまで来るのが長かっただけに、この喜びを損ないたくないという気持ちと、偶々機会がなかったのが重なって、そのまま長らく疎遠になっていた。

 そんなわけでメリル・ストリープ主演だが、せっかくアマプラに入ったので有名作品は観ていこう、シドニー・ポラック監督だし、歴史ものは初めでだし、くらいの気持ちで観た本作だったが、大変よかった。しかも2時間半余りの長尺が、メリル・ストリープ一人でもってるという驚きの作品。
 いや、びっくりするほど綺麗でびっくりした。アップになるたびに見惚れてしまう。20世紀初頭のファッションがめっちゃ似合うんだな。現代ファッションだと、顔のつくりが立派すぎて似合わない。それこそプラダくらいだろ。しかも20世紀初頭ファッションが100点だとしたら、プラダですら85点くらいだ。両大戦間になると、カジュアル寄りのファッションはすでに似合ってないので、本当に現代に向いてないんだな。

 これでようやく、なぜメリル・ストリープは「似合わない役」ばかりなのかが解った。服が似合ってなかったからだ。服が似合ってないから、画面上で浮く。なのに誰も(物語上でも製作上でも)「異物」扱いしないから違和感がひどい。演技過剰と見えたのも、実のところは「似合わない役」を似合ってる体で無理矢理やってるから、なのかもしらん。『シー・デビル』が嵌まってたのは、「美人の人気作家」は虚像だった、という役どころだったからだろう。
 ほかに歴史もの(第一次大戦以前)は1981年公開の『フランス軍中尉の女』(19世紀後半)くらいか。でもこれ、メタフィクション的な構造らしいんだよな。まあいずれ機会があったら観るけど。

『プラダを着た悪魔」感想 

映画感想INDEX

|

« ゴジラ-1.0 | トップページ | ロブスター »

「思い出し鑑賞記」カテゴリの記事