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ラブレス

 2017年公開。アンドレイ・ズビャギンツェフ監督は1964年生まれ。00年代のロシア映画は深刻なシーンを深刻に表現しすぎてギャグみたいになってたが、本作は全編通して客観的な視点が徹底していて、タルコフスキーみたいだ。初冬の寒々しい光景そのものの、寒々しい映画。以下、ネタバレ注意。

 前半はそこそこ裕福な夫婦のクズっぷりが淡々と描かれ、後半は行方不明になった息子の成果の上がらない捜索が淡々と描かれ、とにかく見応えがある。その客観視のフィルターを唯一突破してくるのが、12歳の息子が咽び泣くシーン。しかしその後は監督の視線は二度と少年の寄り添うことなく、再びすべてを突き放す。
 警察の無関心ぶりがひどいが、ボランティアの人たちがびっくりするほど有能。結局手遅れだったわけだが、彼らがいなかったら廃ビルに脱ぎ捨てられたジャケットも見つけられなかったし、遺体も身元不明で終わってたのは確実。あの警官は、ボランティアに繋いでくれただけでも、自称するとおりだいぶ親身だったんだなあ。
 実在のボランティア団体をモデルにしているというか、監督が離婚の話を撮りたいとなんとなく思ってたところに、件のボランティアの存在を知って本作になったそうだ。いろいろと終わっている国でも、あんなに善良で有能な人たちが大勢いる。あんなに善良で有能な人たちが大勢いても、なお終わってる国である。

 遺体の顔が潰れていて、事故だと思いたいが、雪も降る中でジャケットを脱いでいくのは不自然だから、やっぱり殺されたと見るべきか。遺体に対面した母親の慟哭は、嘘偽りないものではあっただろう。だからといって彼女が性根を入れ替えるなんてことはなく、事件から2年後、不倫相手と結婚し、以前よりもさらに裕福な生活を送る彼女の顔に刻まれた「永遠の不満」の表情が凄まじい。
 この元不倫相手は、愛人の息子の捜索に熱心に協力してくれたいい人なのに、ちょっと気の毒である。まあ不倫してたのが悪いといえば、そうなんだけど。

 父親のほうも不倫相手と結婚しているが、狭く安物が溢れるアパートで、妻にも生まれた子供にも関心を失っている。背後に流れるウクライナ紛争のプロパガンダニュースで終わるのは、公開当時よりさらに皮肉。

「ギャグになってしまっている」00年代ロシア映画感想

2004年『ナイト・ウォッチ』
2006年『デイ・ウォッチ』
2007年『12人の怒れる男』(ロシア版)

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