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ファーザー

 2020年公開。劇作家フローリアン・ゼレールが自らの戯曲le pereを映画化(フランスで2015年に別の監督によって映画化されている)。ネタバレ注意?


「認知症患者の世界」ってだけなんだが、映像、演技、演出、音楽、すべてが素晴らしい。ただ、老いた父親(アンソニー・ホプキンス)の主観(現実と幻覚が混在している)を中心に他者の視点(客観/現実)がところどころ差し挟まれる構成かと思いきや、眠っている父親の首をオリヴィア・コールマン演じる娘が締めるシーンは、明らかに父親の幻覚でも現実でもないんで(娘の空想?)、どう解釈したもんかな。単なる粗と片付けるべきか。
 現実と妄想の境界の危うさを淡々と描き続けるだけで、なんの「解決」もない。認知症が(今のところ)そういう病だからなあ。安易な「解決」は嘘になってしまう。ホラーあるいはサスペンス的な脚本・演出にも、しようと思えばいくらでもできただろうけど、そうしなかったことも併せて、誠実である。

 ホプキンスの演技をいいと思ったことがなかったんだが(『羊たちの沈黙』以外、はまり役だと思ったこともないし)、魅力的だったり鼻持ちならなかったり悪意に満ちていたりとコロコロ変わる印象の演じ分けが凄い。そして最後に「ママに会いたい」と泣く場面は、本当に幼い子供のようで可哀想。

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