シティーハンター(フランス版)
2019年公開。冒頭、美容整形手術を受ける中年男性が字幕で「モッコリー氏」とあって、直後に仏語でも「ムシュ・モコリ」(仏語には長音も促音もない)と言ってたので吹く。後で知ったことだが、かの国では少なくともオタクは『シティーハンター』の影響で「もっこり」を知っているのだとか。仏語Wikiに記事まである。
https://fr.wikipedia.org/wiki/Mokkori
仏語版のほかは日本語版「モッコリ」とイタリア語版「mokkori」(促音があるので「モッコリ」と発音)のみ、いずれも当然ながら『シティーハンター』に言及。
80年代末の少年漫画のギャグとおフランスの伝統的なギャグは異なるものだが、ベタだという点では共通しているので相性は悪くない。前半はくすっとする程度だったが、後半は笑いっ放しだった。00年代までのヨーロッパ大陸のアクションは、なんかまったりしてたんだけど、10年代の間にすっかり解消されたようだな。
「原作、俺の大好きな漫画! 監督、俺! 脚本、俺! 主演、俺! ヒロイン、俺の嫁!」なんて、どこをどう切っても駄作を約束されているのにもかかわらず、こうも見事に昇華できたのは、「原作が大好きだから、原作を俺(と嫁)に合わせた」ではなく、「原作が大好きだから、原作に俺(と嫁)を合わせた」からだろう。『シティーハンター』の実写映画化は、フィリップ・ラショー監督のずっと昔からの夢だったというから、自分自身を実写版『シティーハンター』の監督・脚本・主演をできる人間に作り上げてきたのはもちろん、「香を演じられる/演じてくれる」女性を配偶者に選んだのだとも言える。フランス人って白人にしては彫りが浅い人が多いから、原作の絵柄と相性がいいよね。
原題Nicky LarsonはTVアニメがフランスで放映された時のタイトルで、冴羽遼の名前のローカライズ。香はローラ。本作でもその名前のままで、日本語字幕でだけリョウ、カオリになってる。
アニメがフランスで放映された時期は、日本語でググってもわからなかったので仏語Wikiを見たら、日本での放映開始から3年後の1990年からだった(仏語のレベルは初歩だが、合ってると思う。機械翻訳は日本語訳文が読むに堪えないので使わない)。キャラの名前だけじゃなくて、主題歌までローカライズされていたそうで、映画中盤にショーのシーンがあって、歌手が妙にピックアップされてるなと思ったら、そのローカライズ版主題歌(エンディングに流れる)の歌手だそうな。
Animeから日本らしさを徹底的に抹消するローカライズは、かつてはどの国でもやっていたとはいえ、ことフランスに関しては、以前タンゴの歴史を調べていた時に出くわした20世紀初頭のフランス人による「フランス人が好むものは、すべてフランスのものだ。タンゴも我々が好むから我々のものだ」という実に清々しい文化盗用宣言を思い出さずにはいられない(そうは言っても、ヨーロピアン・タンゴとアルゼンチン・タンゴがだいぶ別物なのは事実だが。この発言の出典は失念してしまいました)。
TVアニメ版『シティーハンター』のフランスでのローカライズがどんなつもりで行われたかは知らないが、そこから生まれた本作は、紛れもなくシンクレティズムの傑作である。
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