コントロール
2007年公開。写真家・ミュージックビデオ監督としてすでに著名だったアントン・コービンの初監督作品。英国のロックバンド、ジョイ・ディヴィジョンのボーカル、イアン・カーティスの伝記映画。
ジョイ・ディヴィジョンは1976年結成で、1980年、初のアメリカ・ツアーへの出発直前にイアンが自殺(享年23歳)。ロック音痴なので、本作で初めてジョイ・ディヴィジョンを知る。まあ主演のサム・ライリーも80年生まれとはいえ、英国人でバンドをやってたにもかかわらず、「イアン・カーティスに似ている」と言われても「誰それ」だったというから。役者に転向して、本作の話が来て初めてジョイ・ディヴィジョンについて知ったそうだ。
そういうわけで、確かにサム・ライリーとイアン・カーティスはよく似ている。ただイアンのほうは、明るい青い瞳(白黒写真でもはっきり判るくらい色素が薄い)が印象的だ。
イアンの妻デビーにサマンサ・モートン。同年の『エリザベス ゴールデンエイジ』のスコットランド女王メアリーはあんまり憶えてない。美人にも野暮ったくも見える容姿だが、彼女からイアンを奪うベルギー人女性アニークのアレクサンドラ・マリア・ララは、いかにも当時のフランス系って感じで可愛い。『ヒトラー 最期の12日間』の秘書役はたった3年前だが、えらい違うな。少しふっくらしてたとはいえ、いかにも野暮ったいドイツ娘だったのに。本人はドイツ系でもフランス系でもなく、ルーマニア系なのか。
あまりにも急激に人気が出てしまったが、その人気も、命を削るようにして詞を書き、歌っているのに、「かっこいいもの」として消費されるだけ、という形でしかない。妻と愛人、どちらか一人だけを選ぶことのできない弱さ……等々から来るストレスが如何に大きかったにしても、癲癇さえなければ生きていられたよな、と思わずにいられない。パフォーマーにとって、いつ起きるか判らない発作ほど厄介なものはそうないだろうし、加えて、どんどん悪化していくとなれば。意識消失も怖いが、作中の描写からすると、時には意識を保ったままの発作もあったようだ。意識はあるのに身体が不随意に動くというのも、それはそれで怖い。いずれにせよ、「コントロール不能」という恐怖だ。
いや、ただでさえ生活が不規則な上に、飲酒はやめないし、薬もちゃんと飲まないんだけどさ。とはいえ効く薬をちゃんと飲まないなら擁護のしようがないが、効くか効かないかも判らない上に副作用もひどい薬を何種類も飲み続けなきゃならんのは、しんどいよ。
一方で、どんなに本人がつらかろうと、他者を意図的に傷つけていい理由にはならんので、妻子に対する仕打ちは有り体に言ってクズ。夫婦のベッドで妻に背を向けて泣き、慰めようとした妻の手を邪険に振りほどく、というのは『アプレンティス』のトランプもやっていたが、あれほんまにうざいな。慰めようとしてくれるという確信がある相手の前で泣き、その慰めを拒絶するという憂さ晴らしまでする。慰める素振りすらしなかったり、一度の拒絶で引き下がれば、盛大に傷つくんだろ? 実際にあった出来事か否かはともかく、どちらの監督も彼らの「繊細さ」を表現したかったのかもしれんが、クズっぷりが強調されるだけである。
それはそうと、マンチェスター訛りって聞き取りづらいな。
後日読んだ『ストレンジ・スターズ』(ジェイソン・ヘラー)によると、イアン・カーティスはSFファンで、マイケル・ムアコックと親交があった。ムアコックはムアコックでロック界と関りが深いが、知り合ったのは偶然で、イアンがマンチェスターの本屋で『ニュー・ワールズ』誌(ムアコックが編集長を務める。当時はすでに不定期刊行になっていた)を買っているのを、偶々居合わせたムアコックが見かけたのがきっかけだそうな。コラボ企画を進めていたが、実現前にイアンが自殺してしまったという。
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』感想(件のシーンには言及してません)
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