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ブルータリスト

 2024年公開。タイトルは、エイドリアン・ブロディ演じる主人公が建築家で、作中の主な時代(1950‐60年代)に流行した「ブルータリスト」スタイルを得意とすることから、字義どおりに解釈すれば「ブルータリズムの建築家」であり、主人公を指す。ブルータリズムの特徴をものすごく雑にまとめると、現代でも「コンクリート打放し」が「おしゃれ」だという感覚があるのは、これの名残。
 ブルータリズムは特定の個人あるいはグループが創始したものではなく、第二次大戦後、早急な都市再建という需要に応えるかたちで、自然発生的に形成されていったらしい。コンクリート剝き出しの武骨で荒々しい(brutal)外見から、この名がついた。
 したがってbrutalistというタイトルは、「粗暴な/残忍な者」という意味にもなる。こちらの解釈だと、いったい誰を指すのか。

 映画とは映像芸術であり、映像でしか表現できないものを表現してこそだ、ということを改めて認識させられた、3時間20分(インターミッション15分を除く)の大作。自宅のノートPCの小さな画面で鑑賞したにもかかわらず、物語や役者の演技ではなく、映像そのものに圧倒され続けた。
 いや、さすがに3時間20分ずっと圧倒され続けてたわけじゃなくて全体の5割くらいだが、これまで観てきた映画の数々のうち、2時間前後の上映時間に対して30秒でも「圧倒的な映像」があるもののほうが少ないからね。
 もちろん、傑作と言わずとも名作・良作とされる映画は、美術、演技、アクションその他諸々を「引き込まれる映像」として撮っている。それら自体の出来がどれだけよくても、見せ方が悪かったらどないもならんからね。それでも良作レベルですら、作品まるごと「引き込まれる映像」だけから成っていることは少ない。本作は残りの5割も、この「引き込まれる映像」のレベルに余裕で達している。

 あと、音楽もすごくよかった。アカデミー賞で撮影賞だけじゃなく作曲賞も受賞しているだけのことはある。ただ、ちょっと不思議だったのは、BGMなのか作中で実際に流れている音楽なのか判らない曲が幾つかあったことだ。明らかに登場人物たちに聴こえているのに、音源がどこか判らん曲も。非現実的な印象を与える効果があったが、それを狙ってのことだったんだろうか。

 物語については……「圧倒的な映像」および「引き込まれる映像」を作り出すためのプロットとしては完璧だが、それ以外で評価するとなると……ホロコーストを生き延びた主人公ラーズローと妻、姪が抱える痛みが、直接的に表現されることが一切なかったのは、そういう意図だろうと予想できて、そう予想してなお、最後の最後に意表を突くかたちで真実が明かされるわけだが、その最後の最後までイスラエルがまったく無批判に「約束された楽園」として描かれ続けたんで、居心地の悪さが圧倒的に優っちゃった。
 製作に7年かかったそうだけど、今の惨状は映画公開の前年にいきなり始まったんじゃなくて、イスラエル建国以来の蓄積と醸成の結果じゃん。それを抜きにしても、ラーズローと妻はアメリカという国のブルータリズム(残酷さ)に絶望してイスラエルという「約束された楽園」へと脱出し、どうやらかなり幸せな余生を送ったらしい。しかしユダヤ系以外の難民は、どれだけ絶望しても、「約束された楽園」なんか用意されてないわけで。

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