悪夢のようなアトピー劇症化から、どうにか回復したのが昨年初夏ですが、それ以来、執筆が遅々として進んでいない原因の残り半分は、「資料が後から後から出てきて、下調べが終わらない」でした。
去年の2月、『SFが読みたい!』のお蔭でスランプから脱してから直ちに執筆に入れたのは、それまでにもう充分下調べが済んでいたからです(少なくとも、そのつもりだった)。
で、全4章予定(プロットは完成済み)のうち第1章を書き終えたので、補足としてもう数冊読んでから第2章に入ろうと思っていたら、「アトピーが爆発した」わけですが。
再稼働して最初に始めたのは、もちろん下調べの続きです。何しろ頭が悪いので、資料を読んだだけでは必要な情報を憶えられません。要約したり書き写したりと、ノートを取る必要があります(だから図書館で借りた本に、鉛筆やボールペンなどで傍線が引かれているのに遭遇すると、すげーな、これだけで憶えられるんだ、と感心してしまいますよ。いやまったく、羨ましい記憶力をお持ちで)。
ところがなんということでしょう、読むべき資料はあと数冊だったはずなのに、その数冊を読んで(ノートを取っている)うちに、新たな数冊を見つけてしまったのです。それは読んだ資料に参考文献として挙げられているものだったり、ネットや新聞などで半ば偶然のように見つけたもの(しかも新たに刊行されたり発表されたものも少なくない)だったりです。
その新たな数冊を読んでいる間に、またもや新たな数冊が見つかり、そうして新たに情報を得るたびに、完成したはずのプロットや、すでに書き上げた第1章のあちこちを修正しなければならなくなる……ということを、去年の初夏以来ずーっと繰り返しているのです。ずーっとです。ダレカタスケテー。
いやいやいや。フィクションは下調べという土台があってこそです。これがしっかりしていなければ、ただの空中楼閣です。だから資料が多いのは喜ばしいことです。
しかし、それにしてもですよ、今回の下調べの範囲はこれまでで最大にして(時代だけでも古代から現代まで)、最も多岐にわたりますが、どの分野も概してマイナーです。日常会話の話題には、まずならない。
そして去年の2月の時点で、すでに読んでいた資料は書籍だけでも軽く数百冊です(もちろん1冊あたりの分量にはかなりのばらつきがありますし、精読してノートを取るものばかりではなく、ざっと目を通しただけで使える情報はないと判断することもあるし、論文集なんかだと1、2本しか読まないこともありますが)。
にもかかわらず、9ヵ月かそこらで、それまで知らなかった資料や、新たに刊行/発表された資料が、書籍だけで百数十冊。しかもほとんどが日本語です。
著作もあれば翻訳もありますが、本を出す人もいれば読む人もいるわけで、いや日本人の知的好奇心って素晴らしいですね。漢籍を地元の公立図書館で閲覧できるのも、英書をネットで買えるのも素晴らしい。資料の多さに文句を言ったりしたら、バチが当たるというものです。
幸いにして、今のところ物語そのものを大幅に修正せずに済んでいるし、たぶん今後も大丈夫でしょう。さすがにそろそろ執筆に重点を移せそうです、あと数冊で。
執筆に専念できるようになったら、今度は没入しすぎないように自己管理する必要があります。
バリバリのフロー状態に在って、精神世界にどっぷり浸かっていた去年の今頃、すでに短く浅い睡眠といい加減な食事(家族がいるので一応まともに作っていたが、まともに食べていなかった)、家事以外の運動量ゼロという生活で、肩や背中をはじめとする全身の筋肉や関節の痛み、頭痛、眩暈、かすみ眼、胃腸の機能低下、肌荒れ等、あれこれ不具合が起きていましたが、ほとんど気にかけていませんでした。
このままでは身体がやばいことになるんじゃないかという気は時々、薄々していたのですが、執筆も構想もやめられないとまらない。
そういう精神状態だったから、その程度の不具合で済んでいたのでしょう。そして一時(のつもりだった)中断の間に不具合を治そうと、規則正しく健康的な生活を再開したのですが、すでに手遅れだった……
いや、2ヵ月もの間、四六時中フローに入りっぱなし、などということは、小説を書けるようになった1999年以来、そうそうあったわけじゃないんですけどね。しかし今や、規則正しく健康的な生活を2日ばかり放棄しただけで、覿面に身体がガタガタになるわけで。
要するに問題は、デビューしてから今夏で14年にもなるというのに、未だに切り替えが巧くできないということです。
まあしかし、この問題は執筆に重点を移した時に改めて向き合えばいいことです。今はあと数冊、あと数冊。
というわけで、気温も充分上がってまいりましたので、規則正しく健康的な生活を維持している限りは、かなり元気です。何しろがさつでずぼらなので、あんまり自己管理しすぎると、それだけでストレスになるので、適当に気を抜きつつ生きてます。というところまで自己管理しています。
それに運動と料理に関しては、もともと好きなので苦にならないのはありがたいことです(好きなだけ。得意なわけではない)。
しかも健康だった(今に比べれば)頃は、運動しなくても栄養バランスにさほど気を遣わなくても、少なくとも短期的には大して影響はなかったのが、今では日単位で如実に影響が出るのでモチベーションも上がります。
特に運動は、やればやっただけ効果が出るのが嬉しい。運動万歳。
なお、効果というのは体調に対してです。運動能力や体型に対しては、年齢もあるから少なくとも短期的には効果など出ない。長期的には……さあどうだろう。
あと、「やればやっただけ」と言っても、運動音痴の運動ですから大したことはできません。ヨガ、有酸素運動(動的ストレッチを兼ねる)、筋トレというメニューで、筋トレは自重筋トレを1日3種類、ゆっくり数回~十数回やってます。
以前は速いピッチで数十回やってたんですが、それだと私の場合、フォームが崩れやすくて非効率的だし危ない……すでに2回も毛細血管を切ってるんで(腕立て伏せで上腕、ショルダーブリッジでふくらはぎ)、もうしません。
運動のしすぎで毛細血管を切っても、少々痛いのと、でっかい青タンが半月近く消えない(しかも最初の2、3日は血流量によってサイズが変わる)くらいしか実害はありませんけどね。学生時代の知り合いは、速いピッチの自重筋トレを毎日数十回どころか数百回続けていたら、ある日とうとう腕立て伏せ中に筋肉を切ってしまったのでした。ものすごく痛いし、治療に時間もかかるそうですよ。怖いですねー。
それから上記の運動メニューに加えて、でんぐり返りの前転と後転を2回ずつやってます。去年のSF大会で、大野典宏氏と増田まもる氏のパネルにお邪魔したところ、会場が9階にあったのでエレベーターに酔ってしまい(なんとかエレベーターを使わずに会場に向かおうと頑張ったのですが、無理でした)、お二人がせっかく質問してくださっても碌な受け答えができず、御迷惑をおかけしたという忸怩たる出来事がありまして。
以来、二度とこういうことにならないように、ちょっとでも三半規管を鍛えるべく毎日ぐるぐる回っているのですが、今のところ高層ビルでエレベーターに乗る機会がないので、効果のほどは不明です。